301・302 
1995年,韓国,100分
監督:パク・チョルス
脚本:イ・スォグン
撮影:イ・ウンギル
音楽:チョイ・ジョンファ
出演:パン・ウンジン、ファン・シネ、パク・ヨンノク

 301号室に男が訪ねてくる。向かいの302号室の女が消えたと言う。301号室の過食症の女と302号室の拒食症の女。二人の間に何があったのか?二人の過去を明かしていきながら彼女たちの不安定な心を描く。 ストーリーには関心できないが、描写力はなかなか。見ている側の精神にまで痛みが伝わってくる。色彩と構図にかなりのこだわりがあるようで、原色の組み合わせと、上からの俯瞰ショットが多用される。少しざらついた映像も観衆の精神を逆なでする。 我々はこういう、映画の中の何かを否定しようとする映画を評価しなくてはいけないのかもしれない。 

 少し、ふたりの主人公の人物像のつくりが浅かったかもしれない。過去の出来事と現実の精神障害がこれほど直接的につながるほど人間の心は単純ではないと思う。それに、プロットももう少し練って欲しかった。最初の10分ほどを見れば、最後のからくりは簡単に予想できてしまう。それが映画の後半の冗長さにつながっているのだろう。その辺りまでぶち壊してしまえば、映画としてかなり新しいものになれたかもしれないと思うと、惜しいところだ。
 原色の組み合わせや、物を食べる口のアップなど、美しさをぶち壊してゆくところにはなかなか迫力がある。
 いかにも若い監督の映画という感じの映画なので、熟練してゆくとどのような作品を作るようになるのかが楽しみ。新しい作品としては、柳美里原作の「家族シネマ」の監督をしているようなので、これも見てみようかな。

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