Yol 
1982年,トルコ=スイス,115分
監督:ユルマズ・ギュネイ
演出:シェリフ・ギョレン
脚本:ユルマズ・ギュネイ
撮影:エルドーアン・エンギン
音楽:セバスチャン・アルゴンケンダイ
出演:タルク・アカン、シェリフ・セゼル、ハリル・エルギュン

 トルコのイムラル島にある刑務所から、ようやく仮出所することができた男たちが家族のいる故郷へと向かう。しかし彼らを待っていたのは必ずしも幸せな家族との再会ではなかった。
 当時トルコは軍政下、いたるところで戒厳令が引かれ、クルド地方ではゲリラの鎮圧が頻繁に行われていた。そのような社会状況の中で生きる人々の苦悩。
 監督のユルマズ・ギュネイは当時刑務所に入っていたため、シェリフ・ギョレンが現場の演出を受け持った。軍政に対する批判的なまなざしと、故郷の自然に対する憧憬。クルド地方の草原、山岳地方の雪山など変化に富んだトルコの自然風景の美しさに満ちた作品。 

 トルコがこんなに気候の変化に富んだ国だとは知らなかった。初夏のような草原、砂漠のような砂地、完全に雪で閉ざされた山岳地。これらの風景の対比が非常に美しい。特に、クルド地方の緑の草原と青い空、茶色い土の家の対比はえもいわれぬ美しさだ。特に、ラストシーン、家のうえに女性が一人たたずんでいるシーンは強烈に印象に残った。
 トルコが抱える社会的な背景は良くわからないが、この社会の不寛容さは悲劇的だ。非道徳的な行動には死をもって報いるという発想。うーん、なんとも。しかし、これを後進的だとか、前近代的だといって片付けてしまってはいけない。むしろそれをトルコというアラブとヨーロッパが衝突する場からのまなざしとして受け止めることによって、様々な問題が浮かび上がってきそうだ。 

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