1957年,日本,89分
監督:増村保造
原作:源氏鶏太
脚本:白坂依志夫
撮影:高橋通夫
音楽:小杉太一郎
出演:若尾文子、菅原謙二、川崎敬三、信欣三、沢村貞子、ミヤコ蝶々

 田舎の高校を卒業した有子は東京に住む両親のもとへ引っ越すことが決まっていた。そんな時、一緒に暮らしていた祖母が急死。死の直前、東京の母は本当の母親ではないことを知らされる。憧れの先生の「いつでも青空を見て元気を出せ」という言葉に勇気付けられて、有子は気丈に東京での生活をスタートさせるのだが…
 増村保造が若尾文子とはじめて組んだ記念すべき作品。継母と娘というシンデレラの物語のアレンジだが、少しも悲惨さがない明るい作品にしあがっている。軽妙なテンポで映画は進みあっという間に終わってしまう勢いのある作品。

 とにかくテンポがいい。むしろ早過ぎるくらいにトントン拍子に物語は進み、一気呵成にセリフをしゃべる。セリフもカットもリズムに乗って、あれよあれよと進んで行く感じ。停滞するとか焦らせるということはまったくなく、軽快にして軽妙(あ、同じか)。
 しかし、それは必ずしも短いカットもつないでつないでというわけではなくて、長いカットも短いカットもいらないところはばっさり切る。その潔さがリズムを生む。まさにモダニズム、日本映画に付きまとう暗いイメージや静謐なイメージとはかけ離れたところで展開する映画。とにかく楽しい。楽しく笑って、わけのわからないうちに映画は終わる。素晴らしいですね。これは。
 しかも、40年前の映画とは思えないほどやさしい。すっと映画の中に入っていける感覚。これこそが映画の快感。こんな映画をスクリーンで見られる機会を逃してしまってはいけません。

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