Terrorizers
1989年,香港=台湾,109分
監督:エドワード・ヤン
脚本:エドワード・ヤン、シァオ・イエ、チェン・クォフー
撮影:チャン・ツァン
音楽:ウォン・シャオリャン
出演:コラ・ミャオ、リー・リーチュン、チン・シーチェ、ワン・アン、リウ・ミン

 研究者の夫と小説家の妻の夫婦、妻の元恋人、ある事件に関わってしまう不良とその恋人、事件に関わる刑事、カメラマン。さまざまな人々の関係が交錯し、さまざまなことが変化してゆく。主人公といえる存在がいない複雑な物語構成から浮かび上がってくるものは何か?
 エドワード・ヤンはこの作品で台湾の現代監督の一人として名を馳せた。それほど「新しい」という印象はないが、ゆったりとした映像に漂う言いようのない緊迫感がすごい。

 全体としてみれば、決して斬新な作品とはいえない。一つ一つのカットは従来の映画作法を踏襲しているものが多い。細かいことだが、別途で胸までシーツをあげている女性とか、タバコを映すときにまず灰皿を映してそこにタバコがフレームインしてくるとか、「ありがち」な映像がたくさんある。
 だから、いくら見ても、この映画に興奮することはなかった。時折、セリフを削ってうまく映像に語らせているところがあったりして、関心はしたけれど、逆に登場人物が饒舌になりすぎて、映画的世界からさめてしまうこともあった。
 そんなこんなで、「はんはん、こんなものね」と思いながら見ていたのだけれど、最後の最後で感想はがらりと変わった。最後、研究者である夫(名前は忘れました)に物語りは収斂してゆき、小説と現実の境を見失っていくと、昇進がかなわなかったことで狂気に陥り、逆恨みをして次々と人を殺してゆく。「そうきたか、ほほう」と思っていたら、物語は一転。違う結末が待ち受ける。この終わり方は素晴らしかった。本当の結末だけよりも味わい深いし、殺しまくる結末で終わってしまったら、「何の映画?」って感じになってしまう。そこをすっとまとめてしまう。そこがなかなかうまかった。
 というわけなので、眠くっても、がんばって最後まで見てください。最後に置かれる重心は「バッファロー’66」なみです。

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