1994年,日本,79分
監督:黒沢清
脚本:釜田千秋、黒沢清
撮影:喜久村徳章
音楽:岡村みどり、岸野雄一
出演:豊原功補、森崎めぐみ、大森嘉之、大杉漣、寺島進

 悪徳金融業者に手形を盗まれ、多額の借金を抱えてしまった田中タクシーの社長を助けようと幼馴染のヤクザの親分が自分の組・猪鹿組の子分たちをタクシー運転手に仕立てた。ヤクザたちはかたぎの仕事に戸惑いながらも、一人残った運転手木村の指導のもと徐々に運転手らしくなっていくが…
 黒沢清が主にVシネマで活躍した時期、「地獄の警備員」と「勝手にしやがれシリーズ」の間に作られた作品。作品自体は非常にオーソドックスで派手さはない。しかし、画面画面に映像へのこだわりが感じられる作品。
 ちなみに、青山真治が助監督で参加している。

 いい意味で、普通な作品。ヤクザ映画だけれど、基本的にはヒューマンコメディで、派手なアクションシーンがあるわけではない。まあ、Vシネマなので、それほどお金をかけられないということもあるんだろうけれど。
 それにしても、撮り方は決してオーソドックスではない。この映画では特に「引き」の画が多い。タクシー会社でも、がらんとしたガレージの上から取ってみたり、近くにいる人をなめて、奥の人にピントを合わせたりと画面の奥行きを使って人物と人物の距離感を表現しているような気がした。やはりその辺の画面へのこだわりがテレビドラマとは一線を画している理由といったところでしょうか。
 あとは、枝葉のところがとてもいい。タクシーの中でいちゃつく男で出てくる大杉漣が面白い。刑務所から出てくるとき2度とも、まったく同じカット割だったのもよかった。あとは、ユウジ(だったっけ?豊原功補)が二人のチンピラに絡まれて、次のカットで叩きのめされた二人を置いて車で去るシーン、あのシーンはいかにも最近の日本映画らしいシーンという感じ。

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