Le Gale
1987年,イラン,86分
監督:アボルファズル・ジャリリ
脚本:アボルファズル・ジャリリ
撮影:アタオラフ・ハヤティ
出演:メヒディ・アサディ、アスガル・ゴルモハマッディ、ホセイン・マルミ

 新聞配達の少年ハメッドは反政府的なチラシを所持していたとして裁判を待つ間少年院に送られる。そこには室長と呼ばれる威張りくさった少年をはじめ、いろいろな少年が収監されていた。
 少年院という閉じられた空間、虐げられた状況の中での少年たちの関係を描いた作品。物語というほどの物語はなく、映画は淡々と進んでいくが、映像は最初のシーンから素晴らしい。

 物語としては、奥歯に物の挟まったような感じ。それは監督の意図なのか、それとも規制の中での苦心の末なのかはわからないが、核心に行こうとすると話がそれていってしまう気がする。だからどうしても展開が単調になるし、先の展開を求めることで映画に入り込んでいくということも出来にくくなる。
 なので、この映画を見るなら映像に注目しよう。何せ、最初の街(テヘランかな?)のうえからの画。画面の上下にまっすぐ道が走っていて、その周囲はごちゃごちゃと建物が立てこんでいる。その画がそもそも美しいうえ、その画面のちょうど真中に妙に浮いた感じで高速道路らしきものが映っている。そして次のカットは橋らしきものを下から見た画面。そしてその橋からビラのようなものがどさっと降ってくる。これだけでかなりいい。
 その後も映像は面白く、ヨーロッパやアメリカの映画とは明らかに違う映像でしかも美しかったりする。一列に座った少年たちが必死に頭をかきむしるのを左から右にずーーーっとパンして映してみたり。
 あとは、この映画は非常に反復が多い。シャベルで土をすくうところとか、プールに飛び込むところとか、それはそれで映像としてなかなか面白くていいのだが、一番気になるのは少年たちの嬌声。最初は少年たちがまだ子どもであるということを意識させてくれていいかなとも思ったが、本当に繰り返し繰り返しでてくると、だんだん耳についてくる。このあたりは狙いなのかどうなのか。狙いだとしたらそれは苛立ちの表現なのか。苛立ちならば、それは映画に対する規制の中で思うように表現出来ないことに対する苛立ちなのか。等々等々などと勝手な推理が進んでいきます。

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