1961年,日本,84分
監督:鈴木清順
脚本:松浦健郎、石井喜一
撮影:峰重義
音楽:池田正義
出演:二谷英明、南田洋子、小高雄二、芦川いずみ

 山道を走るバス、乗り合わせた若い娘にお酌をさせようとする中年男に散弾銃を突きつけてそれをやめさせた男。男は散弾銃を担ぎ、通りがかりの村人に止められながらもあまり人が行かないという山に入っていく。実はその山はバスに乗り合わせた中年男が製材所を経営している山だった。
 清順映画常連の二谷英明の主演作。場所は日本の山奥だが、いわゆる西部劇。

 これは西部劇なのですね。場所は山、銃は猟銃ではあるけれど、女がいて、バーがあり、決闘がある。分かりやすい悪役と分かりやすいヒーローと分かりにくい悪役がいる。
 ということを加味しつつ考えると、かなり不思議な映画ではあり、パッと見退屈な映画であるようなんだけれど、いろいろと味わい深いという感じ。物語的にも、「なるほどね」「やっぱりね」という展開で、驚きはしないけれど関心はする。つまり全体としてみると崩れず均整を保った映画。細部に入っていけばもちろん不思議な魅力にあふれてはいるのだけれど。
 西部劇ということで基本的に人間の描き方は画一化されているところが清順らしいくずしを拒んだ一つの原因であるのかもしれないと思いながらも、端的な色彩や音楽や映像に清順らしさが垣間見える。たとえば、バーに並べられたビールジョッキの不均一さとか、山奥の酒場には似つかわしくない彩りの構成とか、そういったものです。保とうとする均衡とそれを崩そうとする力とが拮抗する点が清順映画の焦点だと私は思いますが、この映画は少し均衡がわに寄った映画なのではと。私はどちらかというとくずれた側に寄った映画のほうが好き。あるいは狂気の側に。

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