2001年,日本,100分
監督:りんたろう
原作:手塚治虫
脚本:大友克洋
音楽:本多俊之
出演:井元由香、小林桂、富田耕生

 巨大都市メトロポリス、そこではそれを象徴する「ジグラット」の式典が行われていた。メトロポリスを事実上支配するレッド候は国際手配犯である科学者のロートン博士に巨額の資金を払って一体のロボット“ティマ”を作らせていた。その時、そのロートン博士を追って日本から探偵の伴俊作と甥のケンイチがやってきていた。
 手塚治虫の短編を大友克洋が戯曲化し、りんたろうが監督したという豪華な作品。その期待にたがわず豊穣な世界がそこには描かれている。本多俊之の音楽も秀逸。

 やはりアニメはこうじゃなくっちゃ。「アイアン・ジャイアント」もたしかに面白いけれど、あの単純さはやはり子供向けという観を免れない。それに比べてこの映画はすごい。勧善懲悪に表面的には見える(表面的にも見えないかもしれない)その実は非常に哲学的な善と悪の概念が交錯する。果たしてなにを「悪」とみなすのか。それが問題なのである。
 ここに出てくる登場人物たち。ロック、レッド候、アトラス、彼らは異なるものを「悪」と考えていた。その様々な「悪」に対して絶対的な「善」なるものが存在するのか。純粋無垢な存在であるケンイチとティマはその「善」なるものになれるのか?
 解釈的にあらすじを述べるとそういうことだと思います。かなり物語へのひきつけ方もうまく、キャラクターも素晴らしい。特にロボットの描き方はすごく面白い。映像はそれほど「すげえ!」ということはありませんが、やはり完成度は高いと思いました。
 そしてそして、個人的には音楽の使い方がすごくいいと思いました。デキシーランドジャズ風(でいいのかな?)を中心にジャズナンバーをうまく使う。こういう叙事詩的なものを描くとどうしてもクラッシックを使いたくなるものですが、そこをジャズで行ったというところは素晴らしいし、映像と音楽の兼ね合いがまた素晴らしい。ラスト前のあのシーン(ネタばれ防止のためシーンはいえない)にかかる曲(そして曲名もわからない)。何のことやら分かりませんが、そこだけを切り取っても一つの作品となりうるような素晴らしさでした。

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