2000年,フランス,74分
監督:ヴィルジニー・デパント、コラリー・トラン・ティ
原作:ヴィルジニー・デパント
脚本:ヴィルジニー・デパント、コラリー・トラン・ティ
撮影:ブノワ・シャマイアール、ジュリアン・パマール
音楽:ヴァルー・ジャン
出演:ラファエラ・アンダーソン、カレン・バック、デルフィーヌ・マッカーティー

 フランスのスラムに暮らす女性達。その1人ナディーヌは売春をして生計を立てる。友だちと一緒に住んでいるが、その友だちは口うるさくイライラを募らせる。マニュはドラッグに溺れ、仕事もなくバーをやっている兄に金を無心する。兄はマニュを愛してはいるが、小言も多くマニュはそれにいらだっていた。
 フランスの女流作家デパントが自作を友人でもとポルノ女優のコラリー・トラン・ティと組んで映画化。そのセックスとバイオレンスの過激さでフランスで上映禁止にされたといういわく付きの作品。日本では再編集されて劇場公開されたが、オリジナルに近いバージョンもビデオで発売。

 バイオレンスとセックスの描写という点を見れば、確かに過激ということもできるが、むしろ露骨。ことさら過激にしようというよりは生っぽさを表現しようという意図が感じられる。確かに子供に見せるのは… というくらいではあるけれど、物の分かった大人なら、見ても別にどいうということはないなと思う。逆に殺人やセックスのリアルさが感じさせる監督の緻密さが興味深い。
 冷静でしかしそれが逆に冷淡さにつながるマニュの行動や表情から伝わってくるメッセージはそんな過激さがもたらす悪影響を越えるほどの強い力を持っている。いくらフェミニストが言葉で攻撃を繰り返しても実現できないことを1時間強の映画でやってのける。それはすごいこと。強姦されながらも無表情で悪態をつくマニュの視線は男の弱さ(虚勢)とずるさと身勝手さを貫き通す。物理的な力によって女を支配する男が、物理的な力を逆転されたときに起きること。
 女性にとって権威に反逆することは男に反逆することに常に通じる。いまは片意地を張って男性と並ぶことを誇るような女に反逆することも含むが、やはり権力を持つのは男性であり、男性の借りている権威を攻撃することがどうしても必要だ。もちろん暴力をふるうことでそれが解決するわけではないけれど、この映画は権威に反逆するということを象徴的に表現しているのだろう。
 男が買春をして払う金が意味しているものは、彼女達が男を殺して奪う金が意味するものと違うものなのだろうか?

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