1964年,日本,94分
監督:中平康
原作:安川実
脚本:斉藤耕一、倉本聡
撮影:山崎泰弘
音楽:黛敏郎
出演:加賀まりこ、中尾彬、加藤武、北林谷栄

 キャバレー勤めのユカは男の人を喜ばせることを女の生きる目的と考え、ボーイフレンドに加えて“パパ”とも付き合っていた。しかし、ある日ボーイフレンドと歩いているときに家族と買い物をするパパの姿を見かける。その顔が今までに見たことがないほど嬉しそうだったことにユカはショックを受ける…
 加賀まりこ初の主演映画は日活の看板監督中平康によるもの。加賀まりこがとにかくかわいい。

 かなり不思議な映画です。冒頭から外国語と字幕。途中でも静止画に声が入ったり、ストップモーションがあったりと普通ではない効果が多用されています。しかし、だからといって前衛的というわけではなく、オーソドックスなものの中に一つのスパイスとして入っている感じ。だから鼻につくわけでもなく、しかし逆にそれほど印象にも残らないというものです。あるいはむしろそのような効果はひとつの笑い(ギャグ)として存在しているのかもしれない。または、ひとつの転調として。時々止まったり早くなったりすることで、単調になるのを避けるという効果。
 加賀まりこが正面を向いて、棒読みで語る場面。こういうアクセントがあるのはとてもいいと思います。この場面もそうですが、この映画はシネスコの画面の真ん中を使うということが多い。真ん中に物を置いて、左右を空白にするというのはかなり大胆だと思います。
 面白い作り方だとは思いますが、私としてはあまり好みではないかもしれません。なんとなく飄々とうまく立ち回っている感じの映画で、正面からずばっと切り取ることをしないという感じ。抽象的でわかりにくいとは思いますが、そんな感じなのです。人物の描き方も映像の組み立て方もそんな感じです。こういう題材を扱うならば、もっと人間の内面に土足で踏み込んでいくような大胆さがほしかったと思います。そうでなければ全体をもっと軽妙なものにするか、そのどちらかのほうが好みには合うのでした。
 こういう映画のセンスのよさというのも理解できるんですけどね。あくまで好みの問題でした。

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