2001年,日本,92分
監督:佐藤信介
原作:小池一夫、上村一夫
脚本:佐藤信介、国井桂
撮影:河津太郎
音楽:川井憲次
出演:釈由美子、伊藤英明、嶋田久作、佐野史郎

 500年もの間、鎖国を続けるとある国に、隣国の帝政の崩壊で元近衛兵たちが流れてきた。彼らは建御雷(たてみかずき)と呼ばれる一族で、だれかれかわまず殺す暗殺集団となっていた。その中のひとり雪は逃亡者を追い、殺しに行ったところで元建御雷の男空暇に母親を殺したのが現在の首領白雷であることを告げられる…
 1970年代に梶芽衣子主演で映画化されたコミックの映画化。映画のリメイクではなく、原作が同じというだけ。香港のアクション俳優ドニー・イエンがアクション監督を務め、アクションは本格派。

 話がくどい。物語の背景説明をくどくどと、しかもモノローグで語る。それを語る(場面上の)必然性もないし、物語の上でその背景説明が絶対的に必要であるとも思えない。だから、この背景説明は無駄なもので、特に隆の両親が殺されたとかそんなことはどうでもよく、建御家がどうして暗殺者集団になったのかというのも別にどうでもよいことのような気がする。もっと雪の物語に全体を絞って、話を凝縮すれば面白くなったのにと思ってしまう。くどくどした説明がはさまれることで、そこで映画のペースが落ち、アクションシーンにあるスピード感が損なわれてしまう気がする。
 なので、どうしても映画に入り込めない感はありましたが、アクションシーンはなかなかのもの。アクション監督はドニー・イエンで、香港アクション流行のワイヤーバリバリ、いたるところでワイヤーです。これだけ徹底して使われると気持ちのいいものかもしれない。日本映画のアクションシーンとしてはかなりいいものなのではないかと思います。
 そして、意外といいのが釈由美子。アクションシーンにはたどたどしさが見えるものの、ワイヤーのおかげで何とかこなしているし、演技も意外とうまかったりする。無表情さと、感情が表れる顔と、そして終盤のなんともいえない顔と。けっしてうまくはないけれど、何かが伝わってくる感じ。日本アカデミー賞の主演女優賞くらいあげてもいい気がしました。
 しかし、この映画は細部をおざなりにしすぎ。車の汚しは雑だし、血の飛び方や吐き方などもそうとうに安っぽい。(特に必要であるとも思えない)変な特急電車や街並みのCGに金をかけるより、そういった細部をリアルにしていくことにお金をかけてほしいと思いますね。いくらアクションに迫力があっても、流れる血がどう見てもにせものでは面白さも半減です。雪が手の甲をぐさりと刺され、どう考えても骨も神経もばっさり切れているのに、あんなにすぐに回復してしまうのもどうかと思う。
 そういった詰めの甘さが日本の娯楽大作にたびたび見られ、だから巨額を投じた作品はたいていこける。地味な部分にお金をかけるその心の余裕かマニアなこだわりがいい作品を生むのではないかと思ったりします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です