Rebecca
1940年,アメリカ,130分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ダフネ・デュ・モーリア
脚本:ロバート・E・シャーウッド、ジョーン・ハリソン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:ローレンス・オリビエ、ジョーン・フォンテイン、ジョージ・サンダース

 ホッパー夫人のお供としてモンテカルロにやってきたマリアンは崖で自殺をしようとしていた男に出会った。のちに、その男はホッパー夫人の知り合いのド・ウィンター氏であり、マリアンが一度見かけ、その後何度も夢に見るマンダレーの主人であることがわかった。ド・ウィンターはマリアンをドライブに誘い、ホッパー夫人が病気の間に二人は何度もデートを重ねた。しかし、ホッパー夫人の娘が婚約し、マリアンは急にニューヨークに帰ることに…
 ヒッチコックのハリウッド進出第1作。ヒッチコックのいわゆるサスペンスとはちょっと構成が異なるサスペンスチックなロマンス。

 前半はなんだかのろのろとしていて、ヒッチコックらしくないというか、どのようなサスペンスが展開されるのかがわからないのがもどかしい。ネタばれ防止のため全部のストーリーを語ってしまうのはやめにしますが、半分くらいまではばらしてしまいます。マリアンがマンダレーに行っても、まだ物語りは急展開しない。物語が急展開するのは終盤といってもいいころで、そこからの30分から45分は本当にすばらしい。それを見てから考えると、そこまでのもたもたしていたと見える展開も細かな複線の集積だったとわかる。
 結局のところヒッチコックなので、どこかに「恐怖」が存在することを期待してしまう。そしてその恐怖を演出するのはなんと言ってもライティング。ダンヴァース夫人は登場のところから怖い、したから、あるいは横からライトが当てられ、上半分あるいは横半分が影になる。このような演出が「恐怖」を演出するものであることは明らかだ。だからみながマリアンに「怖がらなくてもいい」というのは、逆説的に「彼女は怖い人だ」と語っているのだ。でも、彼女が本当に怖いのかどうかはわからない。その演出された恐怖すらも覆すのがヒッチコックのサスペンスの醍醐味だから。
 この映画はそのような恐怖を演出するライティングをはじめとして、光をうまく使っている。演出として音はあまり使っていないので、白黒の画面ではサスペンスを効果的に演出するのは光なのだろう。クライマックスの場面はまさにその光がすべてを語るのだ。そういえば、最初にシーンでマリアンの夢に出てきたマンダレーでも、ポイントになるのは建物にふっと点る灯りだった。
 ヒッチコックが得意とする演出のひとつ、光の演出が充分に楽しめる作品。

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