Quatre Aventures de Reinette et Mirabelle
1986年,フランス,95分
監督:エリック・ロメール
脚本:エリック・ロメール
撮影:ソフィー・マンティニュー
音楽:ロナン・ジレジャン=ルイ・ヴァレロ
出演:ジェシカ・フォルド、ジョエル・ミケル

 フランスの田舎道で自転車がパンクしたミラベルはたまたま通りかかった女に自転車屋の場所を聞く。その少女レネットは自転車やは10キロ先だといい、自分が直すからといって、ミラベルを家に招き入れる。夜明け前の一瞬に訪れる完全な静寂(青の時間)の話をするレネット、その時間を味わうためミラベルはレネットの家にとまることにした。
 この話を皮切りとした4話の断章。レネットとミラベルの対照的なキャラクターに、ロメールらしい軽妙な語り口と、どこか哲学じみた会話。いかにもロメール、これぞロメール。

 この映画はレネットとミラベルの対照的なところが映画のミソになっていることは間違いない。最初の登場からしてミラベルはスタイリッシュで、レネットは田舎臭く、ダサい。ミラベルは冷静なインテリで、レネットは感情的な独学の芸術家。そんな二人が出会って程なく仲良くなってしまうというところに疑問は覚えるが、ヴァカンスで出会ってすぐ仲良くなるというのはロメールの一つのパターンで、そのあたりの持って行き方は巧妙なので、それほど違和感もなく受け入れてしまう。ミラベルはインテリで、民族学をやっている大学院生だが、そのプロフィールは『夏物語』のマルゴを思い出させる。
 そんな二人だが、二人に共通するのはいい人というかヒューマニストというような側面だ。しかし、そのヒューマニスト的な面でも意見が一致しないことが、「物乞い、万引き、ペテン師の女」という断章で明らかになる。ここの会話は一種哲学的なもので、この哲学的な会話というのもロメールの一つのパターンというか特徴。真っ先に思い出したのは『春のソナタ』の食卓の会話。これにとどまらず、物語とあまり関係なく哲学的な話が挟まれることが多い。それは軽妙でさらりと流れてしまいそうな映画にとって一つのスパイスとなる。
 そういえば、『春のソナタ』も二人の女の子が出会ってすぐに仲良くなる話だった。『春のソナタ』は89年なので、80年代後半のロメールの一つの物語のパターンだったのかもしれない。かなりの数の映画を作り出しているロメールは、一種のパターンを持ち、いくつも見ていると飽きてしまいそうだが、なぜか飽きないのは、他の映画を連想させたり、見ている人を哲学的な思弁に引き込んだり、見るたびに違うところに引っかかるような仕掛けを用意しているからだろう。なんだか、エリック・ロメールの映画だけで半年くらい過ごせそうな気がする。
 ただ、あまり感想が浮かんでこないというのも正直なところで、なんとなく漫然と見てしまうのがロメールの映画なのでした。

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