Fa Talai Jone
2000年,タイ,114分
監督:ウィシット・サーサナティヤン
脚本:ウィシット・サーサナティヤン
撮影:ナタウット・キッティクン
音楽:アマンボン・メタクナウット
出演:チャッタイ・ガムーサン、ステラ・マールギー、スパコン・ギッスワーン、エーラワット・ルワンウット

 ダムはファーイに率いられた盗賊団で銃の名手として「ブラック・タイガー」と呼ばれていた。今日も同じくファーイの手下のマヘスワンと裏切り者の家を訪ね、皆殺しにした。一方、沼の中のあずまやに一人やってきた女性。彼女はダムの写真を持ち、一人待つ。仕事を終え、あずまやへと向かったダムだったが、ついたとき、そこにもう女性の姿はなかった。
 ごく彩色の不思議な色彩の映像に、古風なメロドラマ、西部劇、コメディといったさまざまな要素を詰め込んだタイ流エンターテインメント。作られた安っぽさが笑いを誘う。

 こういう映画は嫌いではない、というよりむしろ好きなんですが、この映画の場合、安っぽく作ることの意味を履き違えているというか、中途半端というか、笑えるところはあるけれど、全体としてはしまりがないというか、そんな気がしてしまいます。
 最初から、色みがおかしくて、なんだか昔のパートカラーの映画のようで、それは面白いんだけれど、それで全部を通すわけではなく、風景が多いところや、加工しやすいところにだけ、そういった風合いを出してしまっている。これは安いのではなく、安易。安い映画を作るのは非常に大変なもの。それもお金をかけて安い映画を作るのではなくて、本当に安い映画を作るのはさらに大変。そのあたりの努力が足りないことがこの色の使い方からも見えてしまう。
 この映画を見ていると、「もっとこうしたら」とか「こうなったら面白いのに」ということが結構ある。たとえば、オレンジ色のごく彩色の知事の家がありますが、最初3回くらい映るまではこの家を正面からしか捉えない。それを見たときに「これはきっと張りぼてだ」と思ったんですが、結局全体があって、ちゃんと映る。多分これは張りぼてだったほうが面白かったと思う。全体を写すのは正面だけで、部分部分は別に作る。そのほうが、非常に変な感じになって面白かったんじゃないかな。と思う。そんな場面が結構あります。
 あと、問題は主プロットのメロドラマがあまりにお粗末。恋愛ではなくて、ダムの人生というか、日常のほうが主プロットで恋愛はサブプロットだったなら、メロドラマのお粗末さ、ありきたりさも目立たなかったろうけれど、ここまで前面に押し出されてしまうとつらい。何せスリルがほとんどない。まあ、古典的メロドラマを使って、全体の時代性を統一しようという意図はわかるけれど、終盤はちょっと退屈してしまう。

 というように、全体としてみると、どうしてもあらが目立つというか、気になるところが多く見られますが、やはり面白いところも結構ある。カウボーイ風の強盗団がいること自体すごいけれど、彼らが馬で走るとき必ず掛かる音楽が一緒。この音楽はなかなか面白い。あとは、ダムがゴンだったか誰だったかの三人組とやりあう二つのシーンはいいですね。「血ぃ出すぎだよ!」とか「弁当箱忘れてるよ!」とか、突っ込みどころ盛りだくさんなので、一人で見るよりは、友達とがやがや見たいところ。
 そのあたりはなんだか「シベ超」的なところもありますが、ちょっとふざけすぎ。ふざけるならもっと真面目にふざけてよ。

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