The Royal Tenenbaums
2001年,アメリカ,110分
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン
撮影:ロバート・D・イェーマン
音楽:マーク・マザースボウ
出演:ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロー、ルーク・ウィルソン、ダニー・グローヴァー、ビル・マーレイ

 天才児として知られたテネンバウム一家の3人の子供たち、長男チャスは投資家として、長女マーゴは劇作家として、次男リッチーはテニス・プレイヤーとして、成長した。しかし今は3人とも問題を抱え、チャスは事故で妻をなくし、マーゴはバスルームに閉じこもり、リッチーは長い船旅に出ていた。そんな3人の父親は20年前に別居していらいホテルで暮らしてきたが、破産し、ホテルを追い出されることになった。『天才マックスの世界』で認められたウェス・アンダーソンが豪華キャストでとったひねりの効いたコメディ。全体的に70年代テイストで統一されているのがなかなかいい。

 全体的にスピード感のあるコメディではなくて、妙なおかしさを狙ったコメディ。リアルに作ることを放棄し、すべてにおいて作り物じみたおかしさを狙う。これがこの映画の笑いの作り方。だからさいしょから人物を正面から中心に捕らえるショットが多い。会話の場面など、普通は空間を出すために斜めから人物をとらえるんだけれど、それをしないことで会話自体が不自然になる。それにともなって切り替えのタイミングもチョっとずらし、会話の間も不思議な感じにする。
 そのような妙なおかしさがそれほどギャグやネタがあるわけでもない映画をコメディとして成立させている。コメディ的なキャラといえば、わたしが好きなのはパゴダ。かなりボケが効いていて、ロイヤルの横で看護士の姿をしていたりするのはかなり笑える。あとはイーライの部屋に掛かっている絵とか、タクシーとか、バスとか。このタクシーとバスというのはとくに笑いを誘うわけではないのですが、とてもいいネタでここにこそこの監督のすごさが出ていると思います。最初に止めるタクシーのぼろさにびっくりしますが、その後出てくるどのタクシーも同じ「ジプシー・キャブ」、バスもずっと同じバス。こういう地味なネタはとてもいいですね。
 どんなに書いても多分おかしさは伝わらない。そういう映画だと思います。それにしても予告編が面白かった割りに、字幕が相当ひどかった。英語をなんとなく聞きながら主に字幕を見ているわけですが、なんだか面白くない。セリフのおかしさがちっとも字幕から伝わってきません。この人はきっとコメディを理解していないんだ、そんな疑問を抱きながら映画を見ていて、それが最後の最後で決定的に。最後の墓碑銘のネタ、映画中に伏線が張られていて、オチになるはずなのに、あの字幕はひどすぎる… やっつけ仕事かオイ!

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