Ruchmore
1998年,アメリカ,96分
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン
撮影:ロバート・D・イェーマン
音楽:マーク・マザースボウ、ピート・タウンゼント
出演:ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、オリヴィア・ウィリアムズ、シーモア・カッセル

 名門ラシュモア校に通うマックスは奨学生だが、フェンシングや養蜂などなどさまざまな課外活動に没頭して成績は一向に上がらない。落第したら退学だと校長に告げられたマックスだったが、勉強をする様子はなく、今度は学校の先生の一人に恋をしてしまう…
 ウェス・アンダーソンの出世作となったとても不思議なコメディ映画。この監督の作品は爆笑作品ではないけれど、映像のつくりなどに非常に味があっていい。

 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』を見ていると、はじめから終わりまであまりに似ているのに驚くのですが、もちろん本当はその逆で『テネンバウム』のほうがこの映画に似ているわけです。ここまで似ていると、それはこの監督のスタイルと考えざるを得ないわけです。
 そのスタイルにはいろいろありますが、まず目につくのは紙芝居型のプロット展開。この映画では月ごとに幕が下りて区切られています。このスタイルが作り出すのは、これが徹底的に劇であるという雰囲気。マックスが演劇をやっているというのも理由にはなっているんでしょうが、基本的にこの映画は「劇」であるということです。
 あとは、物語や人物の描写に深みをもたせてあること。普通のコメディのようにわかりやすく単純なキャラクターを立てるのではなく、普通のドラマに登場するような人物をキャラクターにたて、その関係性も「ボケ-突っ込み」のような固定した関係ではなく、変化する関係である。もちろん普通のコメディ映画でも、ラブ・コメとか、ヒューマン・コメディとか、人間の関係が変化するものはありますが、それはあくまで主の2人とか3人とかの関係で、この映画のように主人公を中心とした相互関係がゆっくりと変化していくところを描くものはなかなかない。
 ここまで見ると、この映画はまったくコメディ映画などではなく、ただのドラマのようなんですが、確かにそうで、筋立てとかキャラクター自体に面白い人はあまりいない。面白いといえば、マックスのやっている課外活動が面白い。こういうネタは私は大好きです。それはそれとしても、コメディアンのビル・マーレイすらコミカルなキャラクターとして登場しているわけではない。
 この映画のおかしさを演出しているのは映像で、一番特徴的なのは、人物を正面から画面の中心に捉えるバスト・ショット。これは非常に不自然なショットで、リアリズムを追求する映画ではほとんど使われないわけですが、この映画はやたらとそのショットを使う。これは最初の「劇」的ということともかかわってきますが、作り物じみた感じを演出する。その作り物じみた感じがおかしさを誘う。他にも作り物じみた感じが結構あって、またマックスの課外活動の話ですが、その紹介場面も非常に作りこまれた感じ。
 という感じでなかなか地味ながら味わい深いいい映画でした。

 ところで、主演のジェイソン・シュワルツマン君は巨匠フランシス・フォード・コッポラの甥で、タリア・シャイアの息子。つまりコッポラ・ファミリーで、ソフィア・コッポラやニコラス・ケイジの従兄弟ということ。ちなみに弟はロバート・シュワルツマンといって、『シュレック』に(声で)出ているらしい。そして兄のジェイソンはPhantom Planetという(結構メジャーな)バンドのメンバーらしい。恐るべしコッポラ・ファミリー!

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