Les Rivieres Pourpres
2000年,フランス,105分
監督:マチュー・カソヴィッツ
原作:ジャン=クリフトフ・グランジェ
脚本:マチュー・カソヴィッツ
撮影:ティエリー・アルボガスト
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:ジャン・レノ、ヴァンサン・カッセル、ナディア・ファレス、ドミニク・サンダ

 フランスの山沿いの村ゲルノンで手を切断され、眼球をくりぬかれ、体中に切り傷をつけられた死体が見つかった。その村はフランス有数の大学を擁し、学長が村長並みの権力を持つ村だったが、殺された男もその大学の職員だった。その捜査にパリからニーマンス警視が派遣される。一方、200キロ離れたザルザックでは子供の墓があらされるという事件がおき、新任の警部補マックスがその捜査に当たっていた。
 複雑に絡み合う殺人事件のなぞを解く二人の刑事をジャン・レノとヴァンサン・カッセルが演じる描いたサスペンスドラマ。原作はフランスでベストセラーとなった小説で、さすがにスリル満点だが、オチがちょっと弱い気もする。

 冒頭の死体を克明に映しながらタイトルクレジットを流すところからして映像にかなりの緊迫感がある。全体的にもブルーのトーン、雪山、雨がちということもあり暗めの画面構成で、いかにもサスペンスという雰囲気が漂う。
 大学というある種の聖域をサスペンスの舞台にしたのもかなりうまく、それも含めて謎解きという点ではおそらく原作の面白さがそのまま映画に反映しているということができるだろう(原作読んでないけど)。結末の部分は原作と同じなのかもしれないけれど、なんだかあっさりしすぎていて、「そうなの?」とちょっと拍子抜けという感じがするのが珠に瑕。最後まで緊迫感を漂わせたまま終われれば、サスペンスの名作になったかもしれないのに。
 映画的には二人の刑事がとてもいい。ジャン・レノはちょっと太めだけれど、そこに貫禄があって、無愛想な役にはぴったり。でもヴァンサン・カッセルのほうがこの映画では味がある。破天荒なようでいながら非常に誠実にことを進める。それでいて三枚目としての役割も負っている。このような役まわりの登場人物がいるところがこの映画のフランス映画らしい(ハリウッド映画とは違う)ところだろうか。
 あとは、恐怖心をあおるような音楽をやたらとつかって、本当に何かがおきるのがどこかわからなくなっている。あまりに何か起こりそうで見え見えというのもどうかと思うけれど、使いすぎるのもどうかなという感じ。観客の緊張感を持続させるという意味ではいいのだけれど、そうして引っ張り続けた緊張感に見合うだけの結末を用意できなかっただけに、少々過剰演出かという気がしてしまう。
 つまり、結局のところこの映画の難点はオチの弱さというところに終始し、映画全編に漂う緊張感が最後まで維持できなかったというところに問題があるということ。それ以外は本当にいい映画でした。

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