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歓楽通り

2003/4/1
Rue des Plaisirs
2002年,フランス,91分

監督
パトリス・ルコント
脚本
セルジュ・フリードマン
パトリス・ルコント
撮影
エドゥアルド・セラ
出演
パトリック・ティムシット
レティシア・カスタ
ヴァンサン・エルバズ
カトリーヌ・ムシェ
イザベル・スパッド
preview
 3人の街娼がパリにまだ娼館があったころの昔話をする。主人公は娼館で生まれた娼婦の息子プティ・ルイとひとりの娼婦マリオン。子供のころから一人の女性の世話をすることに一生を捧げたいと考えていたプティ・ルイは、ついに思っていた運命の女性マリオンに出会い、彼女が幸せになるために自分のすべてを捧げ、彼女の運命の人を探す手伝いをする。
 うだつの上がらない男を描かせたら世界一かもしれないパトリス・ルコント監督がその極みともいえる娼館の世話係を主人公とした映画を撮った。まさに匂い立つルコント的世界。
review
 映画が匂い立つ瞬間というのがある。画面を見ていて「これぞ映画だ」と思う瞬間、それがあるだけでその映画には価値があると思ってしまう。この映画にもそんな瞬間がある。それは橋の上、車が止まり、下を蒸気機関車が走ったらしく、端の隙間から湯気が立ち上る。向こう側が見えなくなるぐらいの真っ白い湯気が画面いっぱいに広がったときに、その瞬間が訪れる。ひどく映画的だとしたいえないその瞬間、ルコントの映画はいつもそうだと思い出す。ルコントの映画は、一つの物語としてはどうってことない、男と女の物語、大体うだつの上がらない男と魅力的な女、その二人が繰り広げる物語がただ淡々と語られるだけだ。物語の内容は劇的なものも多いけれど、映画の語り口はソフトで決して過剰に劇的にはならない。
 そのように淡々として単調となりがちな映画であるにもかかわらず、映画が匂い立つ瞬間があり、そこで観客はその映画に引き込まれる。最も印象的だったのはその湯気が立つ瞬間だったけれど、ほかにもマリオンの方にプティ・ルイの手が触れる瞬間とか、さまざまな瞬間に映画の匂いがする(匂い立つというほどではない)。

 もう一つ、この映画で面白いと思ったのは、カメラの動き。カメラが動くのではなくゆれる。何人もの娼婦とプティ・ルイが会話するシーン、話者が変わるごとにカットは切り替わるんだけれど、それは単純な切りかえしではなく、カットがわかったあとカメラが少し動く。しかもそれがまっすぐではなく、ゆれながら。 そんなカメラの揺れる動きが最も魅力的に映画を演出するのはダンスのシーン、ダンスをし、揺れ動く二人とそれに呼応するように揺れるカメラ。両方が揺れることによって、どちらかが打ち消され、停止しているような映像を作り出すのでもなく、ゆれを倍化させて激しい映像を作り出すのでもない。微妙に異なる2つのゆれの微妙な混ぜ合わせによって生み出される揺れが、観るものの陶酔を誘う。これも映画が匂い立つ瞬間だ。
 別段劇的でもなく、出ているのも特別魅力的な人たちというわけでもない。マリオンもプティ・ルイが力説するほどの絶世の美女というわけではなく、ましてやプティ・ルイは人をひきつける魅力があるわけではない。そんな映画に観客を引き込み、陶酔の域にまで持っていってしまう。それこそが映画に「匂い」を与えるルコントの映画魔術なのだとこの映画を見て思った。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: フランス

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