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嵐が丘

2004/5/7
Abismos de Passion
1953年,メキシコ,86分

監督
ルイス・ブニュエル
原作
エミリー・ブロンテ
脚本
ルイス・ブニュエル
ピエール・ユニク
撮影
アグスティン・ヒメネス
音楽
ラウル・ラヴィスタ
リヒャルト・ワーグナー
出演
イラセマ・ディリアン
ホルヘ・ミストラル
リリア・プラド
エルネスト・アロンソ
preview
 エドゥアルドと妻のカタリーナ、妹のイサベルが暮らしている屋敷に突如として現れたアレハンドロは、かつてカタリーナとともに育てられていたが、カタリーナの父の死後、息子のリカルドに冷遇されて家を出たのだった。いまだアレハンドロを愛しているカタリーナは彼と頻繁に会うようになるが、彼を野獣のような男だと考えるエドゥアルドはそれを阻止しようとする。しかし、妹のイサベルまでもがアレハンドロに惹かれてしまい…
 エミリー・ブロンテの『嵐が丘』の舞台を大胆にメキシコの砂漠に置き換えて、すっかりブニュエル世界の話にしてしまったブニュエル版の『嵐が丘』。とにかく情熱的で、激しい話になっている。
review
 映画の冒頭で「小説の精神を…」などという断りが入るわけだが、それくらいこの映画は原作から離れている。ブニュエルの映画の多くは原作の原形をとどめないわけだが、この映画の場合は、それを逆手に取ってというか、あえて原作をブニュエル風に解釈しなおして映画にしてしまったという感じである。小説の裏を読めばこういう話になるのだというブニュエルらしい皮肉の表れと考えることもできる。
 まあ、とにかくこの映画は激しい。登場人物たちはとにかく感情が赴くままに、自分の感情が求めることを後先考えずにやる。ブニュエルの「社会道徳の観念がない」という言葉そのままに、まさに本能的に動くのだ。それによって生まれる様々な悲劇。そのように本能ばかりにつき動かされて行動するところには悲劇しか生まれないのではあるまいか。
 ブニュエルは原作を解釈しなおして、そう結論付けたようだ。しかし、そこはブニュエルなわけで、とにかく悲劇に落ち込む物語を喜劇にしてしまう。この小説の主人公たちは彼が常に批判の矢面に立たせるブルジョワであるわけだし、彼らの悲劇は人民の喜劇、とまでは言わないまでも、過剰に悲惨な悲劇が喜劇に転ずるというのはブニュエルの映画ではよく見られるものであるような気もする。

 なので、『嵐が丘』という題名に引きずられずに見た方が多分面白い。単純にメキシコのブルジョワの悲劇としてみた方が。そう見れば、この映画が抱える過剰さは笑える。過剰さが笑いに結びつくのは、現在のハリウッド映画にも70年代の日本のB級アクション映画にも、80年代の香港映画にもあるが、50年代のメキシコにもあったということだろう。
 『嵐が丘』をこんな皮肉な笑いに包まれた映画にしてしまうというのは、まさにブニュエルの才能なのだと思う。
Database参照
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国別・年順: メキシコ

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