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さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち

2004/8/3
1978年,日本,151分

監督
舛田利雄
原作
松本零士
脚本
藤川桂介
山本英明
舛田利雄
作画
湖川滋
音楽
宮川泰
出演
富山敬
仲村秀生
麻上洋子
神谷明
野村信次
納谷悟朗
preview
 西暦2201年、地球に平和が戻り、輸送艦隊の護衛艦の艦長となった古代進は雪との結婚を控えて地球に帰還する。そして、帰還途中に傍受した音声信号が宇宙の危機を予告していることがわかるが、地球の政府は動かず、さらにヤマトが廃艦になると告げられて、古代と元ヤマト乗組員の仲間たちは自分たちだけでその信号の発信源へ向かう旅に出ようとヤマトに集結する…
 TVシリーズの映画化にもかかわらず大ヒットした『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版続編。この作品もヒットして、今度は逆にTVシリーズ化された。
review
 前作と違って劇場版オリジナルということで、ゆったりとした展開で、細かい部分までよく描けている。そして、プロットとしては古代進が主人公となり、完全に古代進の物語となっている。もちろんヤマトがその土台になってはいるけれど、古代進とそのほかの人たちの物語なのである。物語の序盤でヤマトの仲間たちが沖田艦長の命日に集まる場面で古代と雪だけが遅れてくる。この遅れて登場するという登場の仕方が、他の登場人物との差別化であり、主人公を主人公として明確化させる方法としてある。
 前作が個人の物語というよりはヤマトの物語であっただけに、その違いが際立つ。そして、その古代進むという主人公はヒーローでありながら、未熟な存在である。ヒーローではあるが、周囲の助けなくしては立つことはできず、しかも周りが身を賭してでも助けたくなるような存在であるのだ。このようなヒーローを日本人は好むような気がする。完全無欠のヒーローよりは周囲に支えられるヒーロー。その辺りの物語の組み立てが、この作品をヒットに導いた。
 そして、この映画のテーマは愛。「愛は地球を救う」ではなく、「愛は宇宙を救う」のである。このテーマは前作の段階ですでに予告されていたというか、何よりも「愛」が重要であるということが物語に通底していたといえる。それが題名にまで「愛の戦士たち」と加えられて、明確化された。
 しかし、その愛はなぜか地球の人たちにしか向けられない。「全宇宙に平和を」といいながら、その「全宇宙」なるものは見えてこず、地球と敵がいるだけなのだ。その辺りがこの映画の弱いところではないかと思う。愛、愛と言いながら、その愛が向けられる対象は仲間たち、そしてせいぜい地球の人々。その辺りがこの映画の弱いことかもしれないと思う。

 まあしかし、実際のところ面白いのは、冒険でありSF的な部分である。だから、そこが面白ければいいともいえるので、そんなに気にはならない。 SF的な部分と言えば、この作品で1つのキーとなっているのが「反物質」という概念だ。この概念は物質にはその対立物として「反物質」なるものが存在するはずであるという発想で、ようはプラスとマイナスのようなものだが、その2つが結びつくと核融合のような現象がおきて、膨大なエネルギーが発生するという考え方である。これはSFではおなじみではあるが、あくまで理論的な推測から出てくる概念でしかない。つまり、きわめてSF的な概念ということだ。
 まあ、内容はともかくとして、そのようなSFの定番ともいえる概念が出てくるのはSFファンとしては楽しく、それはつまり大人でも楽しめるということで、それもまた松本零士作品の魅力である。

 この作品は、ヤマトのシリーズの完結編として作られた。しかし、この作品を基に作られたTVシリーズでは少し違う展開と結末が採用され、作品は劇場版第3作『ヤマトよ永遠に』、TVシリーズの第3作、さらにはそのスペシャル版(後日『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』劇場公開される)、劇場版第5作『宇宙戦艦ヤマト 完結篇』と展開されていくことになる。
 ただし、ヤマトでの世界の順番としては、TVシリーズの2、劇場版の4(『新たなる旅立ち』)、劇場版の3(『ヤマトよ永遠に』)、TVシリーズの3、劇場版の5(『完結篇』)という順番になる。
 同一シリーズにもかかわらず、そこに統一性がなく、矛盾が存在するというのも松本零士のシリーズものの特徴のひとつである。そして、そこに整合性を無理につけようとせず、放っておくのも非常に面白い。
 松本零士の魅力は尽きず、ヤマトの魅力も尽きない。見るたびにそう思ってしまうところがやはりすごい。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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