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ぼくの伯父さん

2004/9/18
Mon Oncle
1958年,フランス=イタリア,120分

監督
ジャック・タチ
脚本
ジャック・タチ
ジャック・ラグランジュ
撮影
ジャン・ブールゴワン
音楽
アラン・ロマン
フランク・バルチェッリ
出演
ジャック・タチ
アラン・べクール
ジャン=ピエール・ゾラ
ドミニク・マリ
アドリアンヌ・セルヴァンティ
preview
 ゴムホースを作る会社の社長アペールは息子を学校に送っていくが、帰りは妻の弟のユロ氏が迎えに行き、ユロ氏はその甥のジェラールと一緒に遊ぶ。アペール夫妻はぶらぶらしているユロに仕事やお嫁さんを見つけようとするが、ユロ氏はいつの間にかそれをぶち壊してしまう。でもジェラールはそんな伯父さんのことが大好きで、いつも一緒に遊んでいた。
 ジャック・タチといえば“ユロ氏”という『ぼくの伯父さん』シリーズの第1作。チャップリン的な喜劇性と風刺をこめた作風はフランス・コメディ史の中でも異彩を放つ。世界中どこを探してもこんな映画は他にない。
review
 これはもちろん基本的にコメディであって、ユロ氏のとぼけたキャラクターから想い出されるのはもちろんチャップリンであり、今ならばミスター・ビーンである。彼らの共通点はまったくしゃべらないということであり、したがって誰もがその共通点をすぐに思いつくに違いない。つまりそこには、チャップリン→ユロ氏→ビーンという影響関係が明らかに存在している。そして彼らはそれぞれの文化的背景によってキャラクターを変化させている。もちろんミスター・ビーンはTVコメディのキャラクターであって、前二者とは格が違うけれど、現代のイギリスにアレンジされるとああなるという例としては面白いということだ。
 チャップリンとユロ氏にはしゃべらないということ以外にも様々な共通点がある。帽子、コート、チャップリンの杖にユロ氏の傘、ジャック・タチは明らかにチャップリンを意識してこのキャラクターを作り出したのだろう。

 そして笑いは、基本的に非常にわかりやすい笑いであり、一つ一つのギャグは非常に短い。しかもチャップリンのようにそれが連発されるというわけではなく、緩やかな物語の進み行きの要所要所にクスリとさせるギャグが織り込まれるのだ。したがってギャグ映画としてはそれほど面白くないといわざるをえないのだが、そのギャグを生み出す背景にあるのが風刺精神であるというところが面白い。
 アペール夫妻というのは明らかに新しい時代を象徴するブルジョワの代表として登場している。彼らは機械/電気にあこがれて、すべてを機械化しようとする。それに対してユロ氏はいつも原付に乗って、いかにも昔風のキャラクターである。そして彼は自分がドジをすることで、新しいものをどんどん取り入れるアペール夫妻(と同じようなブルジョワたち)の可笑しさを引きずり出していく。
 ブルジョワたちの視点から見ればユロ氏は子供でどうしようもない怠け者だが、逆の視点から見れば、アペール夫妻たちはちっとも面白くない人々だ。大げさに言ってしまえば彼らは機械に支配されて心を失ってしまっている。アペール夫妻が主催したブルジョワたちのパーティーが空疎な社交辞令に埋め尽くされてむなしいままに終わっていくのに対して、ユロ氏はけんかをしようとした若者とあっという間に仲良くなって、馬車の上で歌を歌って楽しんでいるのだ。
 このどちらが本当に人間らしく、本当に充実しているのか、ということをジャック・タチは実は辛辣に描き出している。
 つまり、この映画はジャック・タチ版の『モダン・タイムズ』であるということだ。時代の変化によって失われていくもの、それをコメディというヴェールに包んで描き出しているのだ。

 その他にこの映画で印象的なものといえば犬と音楽。ともに映画の最初と最後で強く前面に押し出され、映画の全編を通じて効果的に存在している。犬のほうは多分ジャック・タチが犬好きなんだろうという感じで、そんなに意味があろうとは思わないが、笑いのネタになるという意味では映画にとって重要な存在である。
 音楽のほうは非常に重要だ。冒頭から、音楽にあわせて車が走るシーンがあり、映画全体が音楽のリズムに合わせるように展開していく。音楽のリズムが映画のリズムとなり、映画があたかも音楽であるかのように展開していく。そしてユロ氏がしゃべらないということもこの音楽の重要性と関係してくる。音楽があるからユロ氏はしゃべらなくていいのだ。音楽がユロ氏の台詞の代わりになるから、しゃべっていないということがあまり気にならない。「言われてみればしゃべってなかったなぁ…」というくらいにユロ氏は雄弁なのである。
 そんな音楽の使い方が、洒落ていて面白いけれど風刺も効いてて感心も出来るというこの映画をうまくひとつにまとめているのだと思う。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: フランス

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