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DV2

2004/11/18
Domestic Violence 2
2003年,アメリカ,160分

監督
フレデリック・ワイズマン
撮影
ジョン・デイヴィー
preview
 『DV』で描かれたのはドメスティック・バイオレンスの被害者の避難所“スプリング”であったが、この続編では、加害者に対するDV裁判の様子が描かれる。軽微な暴力でも逮捕され、まずビデオ法廷に出席する。そこで保釈の可否などが決定され、次に裁判に、となっていく。
 映画はただただ裁判の様子を映すだけだ。どのように裁判が行われるのかという興味と、裁かれるそれぞれのケースに対する興味、その興味は尽きることがなく、ただただ呆然の様子を見守ってしまう。
review
 映画は警察がDVの加害者を捕まえる場面から始まる。最初、女性が「殴られたんじゃない」と訴えていることから、男性側が加害者かと思うが、実は女性のほうが加害者で、男性のほうは別れ際に「絶対に保釈してやる」と言い残す。当事者が告訴をやめると言っても、それで話は収まらず、加害者は逮捕されてしまう。そのようにしないと防ぐことが出来ないほどにDVの問題は深刻なのだ。

 その逮捕の場面の後はずっと裁判の場面だ。基本的には実際の裁判の手順にしたがって構成されているようで、まずはたくさんの被疑者が一箇所に集められ、別室で判事が保釈の可否などを審査する“ビデオ法廷”が行われる。ここではどのような罪で訴えられているのかと前科の有無を基本として保釈の可否と保釈額が決められる。時々被害者が商人として判事の前に立つが、被疑者に証言の機会は与えられない。判事は機械のように次々と決定を下していく。

 それに続いて、いわゆる裁判に移る。被疑者と被害者が出席し、時には証人も出席して事件の審議が行われる。わかりやすいケースはほとんどなく、被害者と加害者の主張は対立し、矛盾する。基本的に家庭という密室で起きた出来事であるだけに客観的な事実を認定することは難しく、判事は前歴を判断材料にするしかない。
 そんな中で特徴的なのは、被害者の証言が警察が調書を取ったときと変わってしまうということが頻発するということだ。あるケースでは夫が酒を飲んで車を運転して外に行こうとしていたから警察を呼んだという妻が、調書ではベルトで殴られたと言ったのに対して、裁判では夫が投げたベルトがたまたまかすっただけだと主張を変える。映像を見る限り、裁判での証言のほうが信憑性があるが、実際に何が起こったかは闇の中だ。
 別のケースでは、加害者と被害者とさらに証人の証言がすべて食い違うというケースもある。根本的なところで話が食い違うので、そもそもどのようなケースかも明らかではないのだが、結局問題になるのはなぜか証人の女性と加害者の男性のどちらが先に手を出したかというものになってしまう。これも結局事実は闇の中、被害者が加害者への告訴を取り出すというので理由を訊くと、2人はよりを戻したということを聞き判事は愕然、憤慨したように証人も含めた3人全員に互いの接触禁止を命ずる。

 その次に描かれるのは簡易法廷のような場所、会議室のような場所で加害者と被害者と判事が話し合いをする(弁護士が同席する場合もある)。ここでは接触禁止の延長などが決定されるらしく、さらには加害者に対してカウンセリングや講習を受けることが命じられたりもする。
 ここで特徴的なのは被害者が基本的に加害者を赦しているということだ。『DV』で被害者たちが自分たちが悲惨な状況にあることを「知らない」ことが問題になっていると書いたが、それはここでも変わらない。結局おなじことが繰り返されてしまうのだろうという予想が容易に立ってしまう。 そのような諦めとも呆れとも取れる気分になるのは、われわれが映画を見る中で徐々に判事の視線にいざなわれているからではないか。互いに異なる事実を主張していながら、結局もとの鞘に納まってしまう。同じ加害者で同じ被害者の事件が何度もおきる。それを見ていると、彼らはなぜこうなのか、当惑する以外にはないような気がしてしまう。そこに厳然と暴力が存在しているのに何も出来ない無力感、解決法が見つからない閉塞感、そのような気分をぬぐうには呆れるしかない。実際に判事たちも呆れた態度をたびたび見せるが、もちろんそれが解決になるわけではない。
 判事たち(そして私たち)は彼らの幾人かが“スプリング”に駆け込むのもそう先の話ではないと予想してなんともやるせない気分になる。

 果たして、この問題に解決法はあるのか、ただ繰り返し彼らを捉え、裁判にかけ、待つしかないのだろうか。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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