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白い酋長

2006/3/24
Lo Sceicco Bianco
1951年,イタリア,85分

監督
フェデリコ・フェリーニ
原案
ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本
フェデリコ・フェリーニ
撮影
アルトゥーロ・ガッレア
音楽
ニーノ・ロータ
出演
レオポルド・トリエステ
ブルネッラ・ボーボ
アルベルト・ソルディ
ジュリエッタ・マシーナ
preview
 新婚旅行でローマを訪れたイバンとワンダ、イバンは法皇への謁見や親戚との食事の計画を話すが、ワンダは気もそぞろ。そして、お風呂に入ると言ってホテルを抜け出し、大ファンである“白いシーク”を演じるスターのリボリに会いに行くが…
 フェリーニの監督第2作は、アントニオーニ原案のコメディ。単独名義の初監督作品がコメディというのもフェリーニらしい。
review

 この作品、コメディではあるがそのプロットのおもしろさが目を引く。映画の序盤は花嫁のワンダが会おうとしている人物は誰なのかという謎で映画を引っ張り、その後はイバンが親戚をどのようにあしらうのかという展開で映画を引っ張って行く。その中で、ワンダがあれよあれよという間にローマから離れなかなか戻れなくなってしまうという巻き込まれ型のコメディが展開される。それ自体の展開はさもありなんという感じで、徐々に退屈にもなってくるのは否めないが、そこではイバンのほうのプロットがドタバタとしてきておもしろくなってくるのだ。
 コメディとしては、抜群におもしろいという作品ではないが、フェリーニの描写力は、そこに悲劇的なものやサスペンス的なものを加える。イバンとワンダはいったいどうなって行くんだというスリル、海を見つめるワンダの背中に漂う悲劇、それらはやはりコメディ的ではあるけれども、非常にリアルで真摯なものである。それによってこの作品は厚みを増し、なぜか引き込まれてしまう力を持つ。
 フェリーニの作品がおもしろいのは、そこに様々な要素が盛り込まれているからであり、見るものがたくさんあるからだ。単純にプロットを追って行くだけでは済まさず、サブプロットが用意され、画面の端に観客の興味を惹くものが配置される。
 初期のフェリーニの作品では旅芸人/大道芸人がたびたび取り上げられ、この作品でも火吹き男が登場するが、この旅芸人/大道芸人の見世物小屋的な楽しさをフェリーニは映画で表現しようとしているのではなかろうか。手を変え品を変え芸を披露することで、観るものの注目を集め、あきさせない。一つ一つはそれほどおもしろいというわけではないのだが、ついつい引き込まれてしまうそんなおもしろさ。そんなおもしろさをスクリーンに表現してしまうのがフェリーニの“魔術師”たるゆえんなのだろう。

 さて、そんなことを考えながら、映画について考えていると、散漫な感想が次々と湧き上がってくる。例えば、大道芸人が登場するシーンで、ジュリエッタ・マシーナが娼婦の役として登場するのだが、その名前はカビリア、フェリーニが57年に撮ることになる『カビリアの夜』を先取りしたキャラクターとして登場しているのである。
 そしてそのシーンで、ワンダを見つけることが出来ないイバンは失意のうちにカビリアではないもう一人の娼婦とどこかへ消えて行く。そして、その次のシーンは翌朝、ホテルに帰ってきたイバンがロビーで待つ親戚たちを眼にするというシーンである。その間に起こったことは語られない。だから観客はその間に起きたことを想像してしまい、それが映画のラストで効いてくるのだ。この絶妙の「見せない」技術もフェリーニの映画術の巧妙なところだと思う。

Database参照
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国別・年順: イタリア

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