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グッドナイト&グッドラック

2006/5/3
Good Night, and Good Luck
2005年,アメリカ,93分

監督
ジョージ・クルーニー
脚本
ジョージ・クルーニー
グラント・ヘスロヴ
撮影
ロバート・エルスウィット
出演
デヴィッド・ストラザーン
ロバート・ダウニー・Jr
パトリシア・クラークソン
レイ・ワイズ
フランク・ランジェラ
ジェフ・ダニエルズ
ジョージ・クルーニー
preview
 1953年、アメリカ、マッカーシーを中心とする赤狩りの旋風が吹き荒れる中、メディアに対しても大きな圧力がかけられていた。そんな中でCBSの人気キャスター、エド・マローはプロデューサーのフレンドリーとともにマッカーシーに挑戦しようとするが…
  スティーブン・ソダーバーグのプロデュースによるジョージ・クルーニーの監督第2作。父親がジャーナリストで、自分もジャーナリストを目指していたというクルーニー渾身の作品。
review

 50年代のアメリカを席巻した赤狩り、そしてその代名詞であるマッカーシー、長らくハリウッドもなかなかスポットを当てることのなかったアメリカの現代史の暗部、それをジョージ・クルーニーはジャーナリストを目指していた自分自身のために、そしてジャーナリストであった父親のために映画にする。
  そしてそのために人気キャスターであったエド・マローを主人公に、彼とマッカーシーの対決を描いたわけだが、この対決の核にあるのは常に“言葉”である。エドとマッカーシーは常に言葉によって対決している。エドは言葉によって人々にマッカーシーの欺瞞を暴き、マッカーシーを追い詰める。対するマッカーシーのほうも言葉によって人々の恐怖をあおり、その恐怖によって人々を支配した。
  マッカーシーという一人の人物の言葉によって、これほどまでにアメリカという巨大な社会が変化し、動いてしまう。そしてそれを一人の男の言葉が返る。言葉とはそのようにして社会を動かし、人間の人生を左右し、そして究極的には人をしに追いやることもできる。この映画は何よりもそのことわれわれに伝えようとする。

 しかしこの映画はあくまでも控えめだ。エドをヒーローとして扱ってはいるけれど、彼を祭り上げるのではなく、単なるひとりのニュースキャスターとして扱う。彼をマッカーシーを辞任に追い込んだヒーローとしては描かないのだ。なぜならそれは事実とは言い切れないから、映画の序盤で誰かが「マッカーシーが自滅するまで待て」という。それはつまり、マッカーシーは遅かれ早かれ自滅していただろうということを意味する。エドはその自滅のきっかけと道筋を与えただけ。社会をに変化をもたらす大きな大きな流れのなかの一人の登場人物でしかないということだ。
  ただ、この映画を見てもアメリカにおけるメディアの影響力の大きさはよくわかる。政界とTV局の関係は、国の行く末に大きな影響を与えるし、そこにはTV局内部の政治関係も影響してくる。ジョージ・クルーニーは右傾化、あるいは保守化する現代のメディアの流れの中で、そこにひとつのさざ波を立てたかったのではないか。彼自身はピンク(共産党のシンパ)というわけではないと思うが、ブッシュ政権下におけるネオコンの極端な保守化が国の趨勢を決めることに対しては危惧を持っているだろう。ハリウッド自体は保守化の大きな流れにしっかりと乗っているが、その中にはそれに反対しようとするものが常にいる。ジョージ・クルーニーはエド・マローが50年代のTV業界で果たした役割を今のハリウッドにおいて果たしたいと考えているのかもしれない。

 まあ、そんな難しいことを抜きにしても、とりあえずこの映画は面白い。確かに多少は歴史を知っていないとわかりにくい部分もあるが、プロットの進め方はスムーズでわくわくさせてくるもするし、終盤の勢いは観客をぐっと映画に引き込む。難しく考えるよりは、楽しみながら知識も得られるというくらいのスタンスで見たほうが面白く見られるような気がする。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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