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ぼくとママとおまわりさん

★★★.5星

2006/10/14
Tsatsiki, Morsan och Polisen
1999年,スウェーデン,95分

監督
エラ・レムハーゲン
原作
モニ・ニルソン・ブランソトレム
脚本
ウルフ・スターク
撮影
アンデルス・ボーマン
出演
サミュエル・ハース
アレクサンドラ・ラバポート
ヤコブ・エリクソン
サム・ケッセル
preview
 スウェーデンで母と二人で暮らす小学生のトビアスはプールに忍び込んで潜水の練習をしているところをおまわりさんのヨーランに見つかり、家に連れて行かれる。トビアスは一度も会ったことのないギリシャ人の父に会うときのために潜水の練習をしていたのだ。一方ヨーランはトビアスの母ティナを気に入ってしまい、トビアスの家に間借りすることに…
  優れた児童文学が数多く生まれる北欧で作られた親子で楽しめる爽やかな作品。
review

 普通といえば普通だが、非常に良く作られた作品だといえる。ヨーロッパの北の端にあるスウェーデンと南の端にあるギリシャ、スウェーデンに住む少年がまだ見ぬギリシャの父親にあこがれるというのは非常に面白みのあるテーマ設定であるし、この子供がまたすごくいい。演技がうまいとか言うわけではなくて、非常に愛嬌があってかわいいし、キャラクターの設定としてすごく素直でいい子なのだ。母子家庭、しかも母親は売れないミュージシャンで電話アンケートのアルバイトで日銭を稼いでいるくらいだからあまりいい家庭環境とはいえないが、母親のたっぷりの愛情を受けてトビアスは素直に育っているのだ。
  そんなトビアスがおまわりさんのヨーランや同じクラスの子供たちや上級生のいじめっ子ニコラスと繰り広げるドラマは見ていてほほえましいし、心温まる。こんな人間関係が周囲にあったら、きっといい子供が育つんだろうなぁという舞台設定なのだ。
  しかし、そんな恵まれたトビアスに決定的に欠けているもの、それが父親である。彼の存在には“父親”というものが徹底的に欠如している。父親として認識できるのは一枚の写真と母の話だけ、母親の恋人は父代わりになるどころかトビアスにまったくかまわない。だから彼は果てしなく父親を求め、自分の中で勝手に父親の像を作り上げて、その像で自分の心を埋める。その空洞はどんなに良い母親でも生めることができないものだ。
  そして彼はヨーランに自分が築き上げた父親像に通じるものを見出し、彼を求める。ヨーキンもそれに答えてトビアスは幸せな日々を送る。しかし、ヨーキンが求めたのはトビアスではなく母のティナなのだ。それは当たり前のことだが、ヨーキンに初めての父親の姿を見出したトビアスにとってはそれはショックなのだ。だから、彼はギリシャの父親への思いをさらに募らせ、父親を偶像化する。

 この物語が優れていると思うのは、話がそのまま終わらないという点だ。トビアスはヨーキンへの失望に加えて、ニコラスの父親を目撃することで父親というものに対するイメージを混乱させる。そして最後にはギリシャにいる父親に会いに行く。そこで彼は大きく成長するのだ。彼の中で理想化され偶像化された父親はもちろんそこにはいない。しかしトビアスは底で失望するのではなく、自分の中に新たな父親像を築き上げようとする。そして子供なりの努力をして、さまざまな状況を受け入れるのだ。
  彼のこの驚くべき成長は周囲の大人たちも成長させる。ギリシャの父も、母のティナも、そしてヨーキンもトビアスのおかげでまたひとつ成長するのだ。だからこそこの映画は大人も子供も楽しめる。大人も子供も同じように感動できる。確かにたいした作品ではないが、こうやって安心してみることができる作品というのは非常に貴重だと思う。

Database参照
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国別・年順: スウェーデン

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