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ベストセラー

ブラッド・ダイヤモンド

★★★.5-

2007/7/3
Blood Diamond
2006年,アメリカ,143分

監督
エドワード・ズウィック
原案
チャールズ・リーヴィット
C・ギャビー・ミッチェル
脚本
チャールズ・リーヴィット
撮影
エドゥアルド・セラ
音楽
ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演
レオナルド・ディカプリオ
ジェニファー・コネリー
シャイモン・フンスー
マイケル・シーン
カギソ・クイパーズ
preview
 1999年シエラレオネ。政府と反政府軍RUFの内戦が続くこの国はダイヤモンドの産出国でもあった。漁師のサイモンは息子との帰宅途中をRUFに襲われ一人捕らえられてダイヤ採掘場での強制労働につかされる。一方ダイヤ密輸業者のダニー・アーチャーは武器と交換でRUFからダイヤを買い、リビアに入るところで捕まってしまう。
  ダイヤ業界の暗部に光を当て社会的な議論を引き起こした点は評価できるが、基本的にはあくまでもハリウッドの娯楽映画。
review

 舞台はシエラレオネ、題材はダイヤモンドの売買ということで、いわゆるハリウッド映画らしからぬ硬派イメージの映画ではあるが、実際見てみると、どこを切ってもハリウッド映画である。
  物語のほうはRUFの捕虜となったソロモンと元傭兵でダイヤ密輸業者のダニーがソロモンが発見した特大のピンクダイヤモンドを探しに行くというもので、そこにRUFの隊長やダニーのボスである“大佐”といったダイヤを求めるほかの人々が絡み、ソロモンの家族探し、ダニーとジャーナリストのマディーとの恋という要素がサブ・プロットとして展開される。
  そして、終わってみればできすぎた話である。ダニーとマディーとソロモンの関係はハリウッド映画に典型的なヒーローとヒロインとヒーローに救われる者という構図に違いない。その3人は衝突を繰り返しながら徐々に互いを理解し、それぞれが少しずつ変わって最後にはヒーローはヒーローになり、ヒロインはヒロインになり、救われるべき者は救われる。
  そんなハリウッド映画であるということは安心してみることができるということではあるが、見終わってみれば「ああ、そう」という感じでもある。非常にわかりやすいが、後には残りにくい。そんな映画なわけだ。

 ただ、この作品はモチーフがアフリカにおけるダイヤ取引であるだけに、それだけでは終わらない。肝心のダイヤ業界の暗部については、この作品が紛争地帯からのダイヤ輸入を禁止する国際法が成立してから作られたものなので、告発するというよりは過去にあった問題点を記録し、それが以下に克服されたかという事実を描くにとどまっている。もちろんこのようなことがあったことは記憶するべきだけれど、この作品自体が社会に対する告発というわけではなく、“社会派”と呼ぶには物足りないものだ。だから、社会的な議論を巻き起こしたといっても、それは現在と未来に対してではなく、あくまで過去に対してだ。見るものに情報を与えはするが、誰かを攻撃しているわけではない。そのあたりもハリウッドらしい。
  この作品で最も注目すべきなのは、少年兵の問題だ。RUFはさらってきた少年たちをさまざまな方法で洗脳し、少年兵に仕立て上げる。そのやり方や彼らの無軌道さが事実であるかは眉唾だが、アフリカに数多くの少年兵がいることは間違いがなく、彼らの多くは未曾有の暴力によって感覚を麻痺させられ、私たちには想像もできないような心理状態になってしまっている。その作品はそんな少年兵たちを映像で端的に描く。小さな子供が笑顔で自動小銃を人に向けて撃つその映像はそれだけで衝撃的だ。
  作品としてはハリウッド映画らしくさまざまなことを問題化することを回避していると言わざるを得ないが、そこにはしっかりと問題が描きこまれているのだ。
  ディカプリオというスターとハリウッドらしい物語展開によって、問題は完全にぼかされてはいるが、読み取ろうと思えば読み取れる問題がそこにある。ダニーがRUFに売る武器が元をたどればアメリカ(あるいはイギリス)からやってきていること(もちろん政府軍の武器も同様だ)は容易に想像できるし、それが意味することも簡単に理解できる。
  果たして製作者の意図としてこのような問題をひっそりと滑り込ませたのか、それともその事実があまりあからさまにならないように(アメリカが表舞台に出ないように)、ビリーを南アフリカの白人という設定にしたのか、それはわからないが、どちらにしても意識的な観客にはそこに潜む問題が読み取れてしまうだろう。
  このように何かがあふれ出てしまう映画は、そのもとが典型的なハリウッド映画であろうと面白いものになるのだと思う。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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