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図鑑に載ってない虫

★★★★-

2007/12/13
2007年,日本,103分

監督
三木聡
脚本
三木聡
撮影
小松高志
音楽
坂口修
出演
伊勢谷友介
松尾スズキ
菊地凛子
岩松了
ふせえり
水野美紀
松重豊
preview
 「黒い本」の記者の“俺”は美人編集長に一時的に死ぬことができる“死にモドキ”を手に入れ、臨死体験をルポしろと命令される。“俺”は友だちでアル中のオルゴール作家エンドーとともに死にモドキを探し始めるが、おかしな出来事が次々降りかかる。
  『亀は意外と速く泳ぐ』の三木聡によるナンセンスコメディ。ドラマの『時効警察』なんかと比べるとナンセンス度は比べ物にならない。とにかく意味不明でバカバカしいそんなコメディ。
review

 三木聡といえばナンセンスさが目を引くが、大人気となったドラマ『時効警察』や原作があった『イン・ザ・プール』ではそれほどエキセントリックな印象はなかった。しかし、この作品はオリジナル脚本で脱力系ナンセンスコメディだった『亀は意外と速く泳ぐ』をさらに27倍くらいにナンセンスにした感じで、それはナンセンスを通り越して意味不明になっている。
  だから、この作品ははまる人にははまるがはまらない人にはまったくはまらない。はまらなければまったく意味はわからず、ただ意味不明で気持ち悪い映像が並んだだけのお粗末な作品と感じられてしまうだろう。しかし一度はまってしまえば爆笑に継ぐ爆笑なのではないだろうか。
  私はといえば、そのような作品の性質を感じ取ってしまったので、一歩引いて見てしまった。それでもこういうナンセンス作品はキライではないので、ついつい笑ってしまうところもあって、作品の質はかなり高いと感じた。ただ、主役の“俺”を演じた伊勢谷友介がどうもしっくり来ない感じだ。この作品世界の人々はみんなあくが強く、その中で伊勢谷友介はどうも存在感が薄いし、演技が下手というわけではないんだけれど、ひとりだけ違う世界の人間のようだ。その点、菊地凛子はよかった。『バベル』よりもはるかに世界に溶け込み、あくの強い役者達の間に自然になじんでいる。彼女はコメディのほうが向いているんじゃないだろうか。

 まあ、それはともかくとして、下ネタありグロありのナンセンスな笑いがこの作品の肝なわけで、それが笑えなければまったく面白くないというわけだ。とくにグロの部分はちょっと過剰気味で虫が苦手な人はちょっとつらいかもしれない。“死にモドキ”が虫だというのは結構後のほうにわかるのに題名をわざわざ『図鑑に載ってない虫』としたのは、虫嫌いのひとが見るのをあらかじめ防ごうとしたからなのかもしれない。三木聡の作品で『死にモドキ』なんて題名だと、虫嫌いのおされな女子が見に行って、グロテスクな虫映像を見てげんなりなんてことになりかねないからね。
  下ネタのほうはむしろソフトで笑える。村松利史が演じたホームレスの“スミ”がぴよーんと飛ぶところなんて面白かったなぁ。
  さらには、ギャグ以外の部分でのうまさもひかっている。コメディ映画ではあるが、サスペンス的な要素もあって、そのサスペンスの部分での「何かが起きそう」という雰囲気を作る演出はさすがにうまい。三木聡はおそらくサスペンス的なものを撮るのがうまい監督なんだけれど、本当にやりたいのはナンセンスコメディで、結局サスペンスにナンセンスコメディの要素をちょっと加味したような作品が一番売れる。だからたまにこんな作品を撮ってこけるけれど、それはそれでいいのだろう。2007年公開のもう1作品『転々』は原作ものでそんなにエキセントリックではなさそうだから、この2本でバランスが取れていたのかもしれない。

 三木聡は才能のある作家だ。多くの人々をひきつける作品も撮れるし、自分の好きな(と勝手に思っているけれど)ナンセンス・コメディでもコアなファンを夢中にさせることができる。残念なのはすべてが“脱力系”というべき作品なことで、もっと骨太で重厚なドラマを撮ったらどうなるのか、というところを見てみたい。こういう小ネタ作品も好きだけど、そのうち是非に。
  しかし、ふせえりはいい味だしてるなぁ… ビシバシステムの活動はしているのだろうか…

Database参照
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監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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