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ベストセラー

悪魔のシスター

★★★.5-

2008/11/6
Sisters
1973年,アメリカ,92分

監督
ブライアン・デ・パルマ
原案
ブライアン・デ・パルマ
脚本
ブライアン・デ・パルマ
ルイザ・ローズ
撮影
グレゴリー・サンダー
音楽
バーナード・ハーマン
出演
マーゴット・キダー
ジェニファー・ソルト
チャールズ・ダーニング
バーナード・ヒューズ
preview
 アーサーは偶然であったダニエルと一夜をともにし、翌朝ダニエルと双子の妹のドミニクの誕生日だと知ってケーキを買うが、その間にダニエルの精神は異常をきたし、アーサーは刺殺されてしまう。それを目撃した新聞記者のグレースは警察に通報するが…
  ブライアン・デ・パルマが敬愛するヒッチコックにオマージュを捧げたといわれるサイコ・サスペンス。映像の冴えに才能を感じる。2006年にクロエ・セヴィニー主演で『シスターズ』としてリメイクされた。
review

 美しいダニエルが薬が切れると豹変して人を殺してしまう、これは言うまでもなくヒッチコックの『サイコ』をモチーフにしている。そして、その殺人を向かいの建物から目撃してしまうというのはこちらもヒッチコックの『裏窓』そのものである。
  その初期には“ヒッチコックの後継者”とも言われたブライアン・デ・パルマがそれを証明して見せた出世作がこの作品といえよう。しかもヒッチコックの2つの名作を組み合わせただけでなく、デ・パルマらしさと時代の変化を取り入れて作品の背景や展開を発展させた。その鍵となるのはダニエルがシャム双生児であったということ。それがサスペンスにグロテスクさを加え、現代的なリアリティを獲得させている。
  ただ、全体的に見ると物語としてはいまいち。デ・パルマ自身プロットにあまりこだわりがなかったのか不整合な部分なんかもある。まあしかし、物語の土台となる“サイコ”の部分はしっかりと作られているし、観客が頭を悩ませるのは主にその部分なので、細部に穴があってもちょっと首をひねるくらいで気になりはしない。

 注目すべきはその映像。前半で分割画面を使ったシーンがふんだんに取り入れられ、これが非常に効果的。薬が切れて悶絶するダニエルと、へたくそな字でケーキにデコレーションする店員ののんきの対照が生み出す焦燥感。殺人の現場を隠そうとする犯人と、なかなか現場に向かおうとしない警察の対照。それらの映像構成は本当に素晴らしい。
  分割画面というのは映像に調和が失われることが多い。だからあまり多く使われることがないわけだが、うまくやれば調和した映像で非常にスリリングな展開を生むことができるということをデ・パルマはこの作品で証明して見せた。それもこれもデ・パルマの映像に対するセンスの素晴らしさによるところが大きいのだろう(現場で分割画面の映像を作れるわけではないので、別々に撮った映像を組み合わせたときにどうなるかを完璧に構成できる想像力が必要)。
  古臭く安っぽいという印象は否めないが、物語の上でも精神的な部分だけを重視し、観客に対しても心理に働きかけることを主眼に置いたことで非常に印象的な作品に仕上がっている。ブライアン・デ・パルマという巨匠の初期作品だからではなく、70年代のサイコ・サスペンスの秀作として記憶されるべき作品だと思う。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ60~80年代

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