つむじ風食堂の夜
2009/11/19
2009年,日本,118分
- 監督
- 篠原哲雄
- 原作
- 吉田篤弘
- 脚本
- 久保浩章
- 撮影
- 上野彰吾
- 音楽
- 村山達哉
- 出演
- 八嶋智人
- 月船さらら
- 下條アトム
- スネオヘアー
- 生瀬勝久
北国のどこかにある月舟町、その片隅にひっそりっとある洋館の定食屋“つむじ風食堂”、近所に住む雨の研究をしている「先生」はある夜その店を訪れる。そこには“二重空間移動装置”なる万歩計を売る帽子屋や読書家の八百屋など風変わりな常連客が集まっていた…
映像と音楽をつなぐ“cinemusica”シリーズの1作。ファンタジックな雰囲気が雪の風景とマッチする。
(C)2009「つむじ風食堂の夜」製作委員会
北国の冷たい空気の中にたたずむ洋館、その中はほっと暖まるような空間、そこに集う人たちは風変わりでその店自体がどこか夢の世界のような雰囲気を持つ。そこに迷い込むようにやってきた“先生”は雑文を書くことを仕事にしながら、雨の研究を生きがいにしている。そして、その先生の泣くなった父親はマジシャンだったという。
下條アトム演じる帽子屋が発明したという“二重空間移動装置”にしろ、父親がマジシャンであるという設定にしろ、どこかで非現実を思わせるところがある。もちろんそれは魔法とか非現実的な力とかいうもののことを言っているわけではない。その意味が説明されていないことも多いが、それは説明できないのではなく、単に説明が省かれているだけだ。その省かれた部分が不思議な雰囲気を作り出し、物語の世界観を定めている。
その雰囲気は嫌いではないし、極端なキャラクターたちの存在感も悪くない。なのにこの映画はあまり面白くない。見ている間はそれなりにふんふんと思っているのだけれど、見終わった瞬間に忘れられてしまうようなそんな映画な気がする。
いろいろなところに隙間があり、そこに意味が隠されているような気がするのだけれど、それが一体何なのかわからない。八嶋智人(先生)と月船さららの関係もそうだが、人間関係も深まるようで深まらず、その関係から何か化学反応が起きるということもない。結局のところ孤独な人間が集まる場を描いただけなのか?孤独な人々が寄り集まって一瞬孤独は癒されるけれど、結局彼らはもとの孤独に帰っていくしかない。そんな印象だ。
記憶に残るのは月船さららの妙なハイテンション、宝塚出身という彼女は女優に転身して間もないのにこれだけ印象に残る演技が出来るというのはすごいことだと思うが、彼女の存在感が強すぎて映画のほうの印象は薄まってしまったように思う。もう一人印象に残ったのはスネオヘアー、その独特の雰囲気はいるだけで印象が強い。
雰囲気で見せる映画というのはこういうぼんやりとした印象になりやすい。その雰囲気を作るのにはさまざまな工夫があり、それを実現するのは本当は難しいのだけれど、感覚に訴えるだけにわかるわからないが分かれてしまいがちだ。まあそれがいいといえなくもないのだが…
(C)2009「つむじ風食堂の夜」製作委員会