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ベストセラー

借りぐらしのアリエッティ

宮崎駿とは違う、でもやっぱりジブリ。粗はあるけど楽しめる。
★★★--

2010/10/17
2010年,日本,94分

監督
米林宏昌
原作
メアリー・ノートン
脚本
宮崎駿
丹羽圭子
作画
賀川愛
山下明彦
音楽
セシル・コルベル
出演
志田未来
神木隆之介
大竹しのぶ
竹下景子
三浦友和
樹木希林
preview
 病気の療養のため母が育った家に一週間滞在することになった少年翔は庭で小人を見かける。実はこの家の床下には小人のアリエッティと両親が暮していた。その夜、はじめて人間の家のものを「借り」に出たアリエッティは翔に見つかってしまい、父はこの家に暮すことに不安を覚え始める…
  宮崎作品の原画などを担当してきた米林宏昌が初めて演出を手がけた長編アニメ。宮崎作品とはちょっと違うが、なかなかのもの。
review

 新人監督のデビュー作ではあるけれど、これはあくまでもジブリ作品、宮崎駿監督作を中心とした「ジブリ」という枠の中でどうしても見てしまう。原画を手がけてきただけあってその絵作りがしっかりとしていることは冒頭を見てすぐわかる。が、同時に「あれ?」とも思う。それは、宮崎作品とは明らかに違う「動き」である。宮崎作品の特徴は動きがあるときには画面全体がうねるようにダイナミックに動くのだが、この作品では、動きのある場面でも画面は安定してそのダイナミズムを助けようとはしない。これがジブリ作品としては違和感を与える最大の要因だろう。

 しかし、見ていくとその違和感は薄れていく。というか、この作品はそういう静かで安定した流れで映像をつないでいく映画なのだ。私はこれはこれで画面に緊張感が生まれていいもんだと思った。ただ、このようにじっくり描いてしまうと色々な部分のあらが目立つことも確かだ。勢いで押し切って観客を無理やり世界に引き込んでしまうことができないので、描写に正確性が求められ、物語や設定の矛盾なども目立ちやすくなってしまう。

 この作品には矛盾や不正確な部分がたくさんある。小人という設定なだけに、モノのスケールなど非常に気を使っていて、液体の一滴の大きさをしっかりと描いていたりもする。しかし、「その縮尺はおかしいだろう」とか、「そのセリフは唐突過ぎないか?」と思ってしまうところが結構あることも確かだ。このような矛盾は実は宮崎作品にもある。ただそれは無理やりつじつまを合わせられ目立たないようにさせられているだけなのだ。この作品ではそれができないから粗が目立つ。

 小人目線になったときと人間目線になったときの音の聞こえ方の違いなんかは凄く面白いのだが、小人のアリエッティの声の高さや大きさが人間と同じというのはどうも納得がいかないとか翔には聞こえるアリエッティの声がはるには聞こえないとか、音をひとつとってもいいところとどうかなと思うところがあるわけだ。

 私は基本的に映画のいいところに目を向けてなるべく粗や矛盾は無視するようにしているので、この映画は楽しめた。粗や矛盾はあるけれど、それを無視して楽しめるだけの魅力も兼ね備えた映画だと感じられた。

 物語は何かどうでもいいというか、何が言いたいのかわからないというか、小人が出てくる割にはすごく当たり前の話になってしまっているけれど(脚本は宮崎駿なのに!)、この調子ならこの監督は宮崎駿とは別の方向性でジブリ映画の型を作っていけるんじゃないかなぁ。次は原作モノじゃなくて、オリジナル脚本で何か作って欲しいところ。

Database参照
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国別・年順: 日本90年代以降

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