Buffalo ’66 
1998年,アメリカ,118分
監督:ヴィンセント・ギャロ
脚本:ヴィンセント・ギャロ、アリソン・バグノール、クリス・ハンレイ
撮影:ランス・アーノルド
音楽:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ、クリスティナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・ギャザラ、ミッキー・ローク

 数年ぶりに刑務所から出てきたビリーは、トイレを探してバッファローの街を歩き回る。彼は母親に電話し、家にいもしない嫁を連れて行くといってしまう。そこで、ビリーはそばにいた見ず知らずの女を誘拐し、嫁のフリをさせようとするのだが…
 「愛と精霊の家」などで知れる俳優ヴィンセント・ギャロの初監督作品。散漫でありながら一本筋の通った物語は、ニューヨークから少し外れたバッファローという街のイメージにぴたりとはまる。
 この映画で最も目をひくのは映像だと思う。評価については賛否が分かれるだろうが、考え抜かれた構成であることはたしか。

 とにかく、映像のことについて書きましょう。まず目をひく、映像のはめ込み。回想シーンのサイズダウン。この辺りは考え抜かれ、効果としてはなかなかのものを生んでいるとは思うけれど、それほどセンスは感じられなかった。それよりも、この映画で最も素晴らしいのはフレームの切り方。シークエンスとしての映像というよりは、一瞬一瞬の「絵」としての構図がすばらしい。歌うビリーの父とそれを見るレイラのふたつの画とか、ビリーと電話するブーク(だったかな?)の腹のアップとか、ビリーとレイラが最初に車に乗るときの上からの構図とか、本当にはっとさせられる「絵」がたくさんあった。あと、映像でよかったのは、ビリーがスコット・ウッドを撃ち殺したと創造する場面。あのセンスは素晴らしい。ヴィンセント・ギャロ今度はコメディを撮って欲しい。(この映画ももしかしたらコメディかもしれない)
 ところで、ビリーに殺されるかもしれなかった、スコット・ウッド。これはアメリカ人ならすぐピンと来る。バッファロー・ビルズのキッカー、スコット・ノーウッドがモデル。1991年のニューヨーク・ジャイアンツとのスーパーボウルでこれを決めれば逆転というフィールドゴールをはずしたキッカー。バッファローの人はいまだに根に持っているらしい。バッファロー・ビルズはその後3年連続でスーパーボウルに出場したが、一度も勝てなかった。ノーウッドがトップレスバーを経営しているかどうかはわからないが、アメリカのプロスポーツ選手は引退後飲食店を経営することが多い。
(注1)
スーパーボウル:アメリカのアメリカン・フットボール・リーグNFLの優勝を決める試合。アメリカ人にとっては非常に大きなイベントで、「招待状を送って犯罪者を一斉検挙した」などといった面白いエピソードには事欠かない。映画にもたびたび出てくる。
(注2)
フィールド・ゴール:アメフトの得点方法のひとつで、キッカーがプレイスされたボールをけってポールの間を通せば得点(3点)を獲得できる。

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